2013年10月3日木曜日

その11 「上座と末席」 ルカ14章7-11節

イエスのたとえ話の学びを進めています。お気づきになっている方もあるかもしれませんが、今まで私達が学んできた「いなくなった羊」「なくした銀貨」「失われた息子たち」「憐れみ深いサマリヤ人」「愚かな金持ち」のたとえ話は、すべてルカの福音書に登場しています。そのルカの福音書の最初にはこのように書いてあります。「私も、すべてのことを初めから綿密に調べておりますから、あなたのために、順序を立てて書いて差し上げるのがよいと思います。尊敬するテオピロ殿。(1:3)」。つまり、この福音書の直接のあて先は「テオピロ殿」であり、その人物は「尊敬する」「殿(閣下)」とあることから、かなり身分の高い人であることが分かります。ですから、このルカの福音書の中には、特に金持ちや身分の高い人に対する戒めが多く含まれています。

今回のテーマは「上座と末席」です。もともとイエス様は、招かれた人々が上座を選んでいる様子に気付いて、このたとえ話を語られました。彼らはもしかしたら、その直前までイエス様と語っていたパリサイ人たちだったかもしれません。他の箇所でも「(パリサイ人たちは)宴会の上座や会堂の上席が大好きで、広場であいさつされたり、人から先生と呼ばれたりすることが好きです(マタイ23:6-7)」とイエス様に戒められているからです。そんな彼らにイエス様は「たとえ話」で語られました。「結婚披露宴に招かれた時には上座にすわってはいけません。あなたより身分の高い人が招かれていたら、席に着いた後で『この人に席を譲ってください』と言われてしまうかもしれません。そうしたら、あなたは恥をかいて末席に移動しなければならないでしょう。でももし末席に着くなら、招いた人が来て『どうぞもっと上席にお進みください』と言われるかもしれません。そうしたら、みんなの前で面目をたもつことになります。」一見したところ「生活の知恵」のようにも聞こえます。日本人には良く分かるでしょう。「みんなの前で恥をかかないためにはどうしたら良いか」、「傲慢だと思われないためにはどうしたら良いか」という知恵が。

でも、そうだとしたら結局は、上座に座りたいということではないでしょうか?私たち日本人は、自分から上座につくようなことはあまりしません。披露宴に行けば大体、席は決まっていますし、そうでなくても(一応)謙遜は美徳ですから、勧められるまで後ろの方に立っていたりします。しかし、心からそうしているかといえば、そうでもなく「人から○○と思われないため」の生きる知恵だったりします。本当は「もっと自分はこう扱われるべきだ」とか「少なくともあの人よりは上に扱われるべきだ」と思っていたりします。そして期待したように扱われないと、機嫌を損ねて、ふくれっ面をしたり、意固地になって、よけい隅っこの方に座ったりするのです。そういう部分で国籍は関係ありません。イエスの弟子たちもそうでした。彼らは事あるごとに「天の御国ではだれが一番偉いか」論じ合っていました。そんな彼らに、イエス様はある時、小さい子供を真ん中に立たせてこう言われました。「まことに、あなたがたに告げます。あなたがたも悔い改めて子どもたちのようにならない限り、決して天の御国には、入れません。だから、この子どものように、自分を低くする者が、天の御国で一番偉い人です。(マタイ18:3-4)」当時の子どもたちは、人数にも入らないくらい「低い」存在でした。でも、だからと言って、ふくれっ面をすることはありませんでした。自分が何者でもないことを知っていたからです。私達も自分は、神様の前に「何者でもない」ことを知り、悔い改め、一方的な恵みを受け入れなければ、天の御国には入ることはできないということなのです。「祝宴(披露宴)」とは「天の御国」のことです。

つまり「神座(かみざ)」にすわるのをやめなさい、ということです。生まれながらの私達は、神様が座るべき心の王座を選び、「これは私の人生だから、ここに私が座り、私の好きなように行き先を決めます」と思う傾向があります。クリスチャンも例外ではありません、パリサイ人のように口先では神様を敬いながら、結局は自分の力で生き、自分の力で自分を救おうとしていることがあるのです。そういう生き方を捨てて、自分は末席に退き、すべてを主にゆだね、自分のために十字架にかかってくださったイエス様を「心の王座(神座・本来神様がお座りになる場所)」にお迎えする時、私達の人生は本当に「祝宴」「神の国」「永遠のいのち」を楽しむことが出来るようになるのです。なぜならその時、神様は私達を高く引き上げ、神の子どもの席に案内して下さるからです。「だれでも自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされる」のです!

人と比べて、上か下かを比べているうちは、人生を楽しめない。
それを止めた時、人生の祝宴が始まる!



主の御前でへりくだりなさい、
そうすれば、
主があなたがたを高くしてくださいます。
ヤコブ4章10節